文部科学省から
平成25年度学校基本調査の速報が公表されている。
高等学校卒業者の進学率は、
1)大学・短大進学率(現役) 53.2%
2)大学(学部)進学率(現役) 47.4%
3)専門学校進学率(現役) 17.0%
4)大学・短大進学率(過年度卒含む) 55.1%
5)大学(学部)進学率(過年度卒含む) 49.9%
6)
高等教育機関進学率(過年度卒含む) 77.9%
と、依然高い進学比率を維持している。後戻りすることは、しばらく無いだろうし、小中高大接続の議論は、社会との接続問題として整理する必要がある。
マーティン・トロウが予言し、喜多村和之が整理した「トロウ=喜多村・モデル※」が、今日の時代そのものであることに驚く。該当する社会(例)の項目のみ、ユニバーサル・アクセス型に移す修正を施した。他の諸国についても、2013年段階では移動があると思われるので、随時修正する。
赤字は、筆者によるものだが、トロウの予言は概ね実現されたと考えるし、さらにその先の「ユニバーサル・アテンダンス」の状況を見通した教育活動が必要であろう。
※トロウ・モデル
http://benesse.jp/berd/center/open/report/yamamoto/2002/iituka_04_02.html
M.トロウによる高等教育システムの段階的移行に伴う変化の図式
高等教育システムの段階 |
エリート型 →
|
マス型 →
| ユニバーサル・アクセス型 |
全体規模(該当年齢人口に占める大学在籍率) | 15%まで | 15%~50%まで | 50%以上 |
該当する社会(例) | イギリス・多くの西欧諸国 | 日本・カナダ・スウェーデン等 | アメリカ合衆国・日本 |
高等教育の機会 | 少数者の特権 | 相対的多数者の権利 | 万人の義務 |
大学進学の要件 | 制約的(家柄や才能) | 準制約的(一定の制度化された資格) | 開放的(個人の選択意思) |
高等教育の目的観 | 人間形成・社会化 | 知識・技能の伝達 | 新しい広い経験の提供 |
高等教育の主要機能 | エリート・支配階級の精神や性格の形成 | 専門分化したエリート養成+社会の指導者層の育成 | 産業社会に適応しうる全国民の育成 |
教育課程(カリキュラム) | 高度に構造化(剛構造的) | 構造化+弾力化(柔構造的) | 非構造的(段階的学習方式の崩壊) |
主要な教育方法・手段 | 個人指導・師弟関係重視のチューター制・ゼミナール制 | 非個別的な多人数講義+補助的ゼミ,パートタイム型・サンドイッチ型コース | 通信・TV・コンピュータ・教育機器等の活用 |
学生の進学・就学パターン | 中等教育修了後ストレートに大学進学,中断なく学習して学位取得,ドロップアウト率低い | 中等教育後のノンストレート進学や一時的就学停止(ストップアウト),ドロップアウトの増加 | 入学期のおくれやストップアウト,成人・勤労学生の進学,職業経験者の再入学が激増 |
高等教育機関の特色 | 同質性
(共通の高い基準をもった大学と専門分化した専門学校) | 多様性
(多様なレベルの水準をもつ高等教育機関,総合制教育機関の増加) | 極度の多様性
(共通の一定水準の喪失,スタンダードそのものの考え方が疑問視される) |
高等教育機関の規模 | 学生数2000~3000人
(共通の学問共同体の成立) | 学生・教職員総数3万~4万人
(共通の学問共同体であるよりは頭脳の都市) | 学生数は無制限的
(共通の学問共同体意識の消滅) |
社会と大学との境界 | 明確な区分
閉じられた大学 | 相対的に希薄化
開かれた大学 | 境界区分の消滅
大学と社会との一体化 |
最終的な権力の所在と意思決定の主体 | 小規模のエリート集団 | エリート集団+利益集団+政治集団 | 一般公衆 |
学生の選抜原理 | 中等教育での成績または試験による選抜(能力主義) | 能力主義+個人の教育機会の均等化原理 | 万人のための教育保証+集団としての達成水準の均等化 |
大学の管理者 | アマチュア大学人の兼任 | 専任化した大学人+巨大な官僚スタッフ | 管理専門職 |
大学の内部運営形態 | 長老教授による寡頭支配 | 長老教授+若手教員や学生参加による”民主的”支配 | 学内コンセンサスの崩壊?
学外者による支配? |
|
M.トロウ「高学歴社会の大学」(天野郁夫、喜多村和之訳、東京大学出版会、1976)より喜多村和之が図表化
(M.トロウ「高度情報社会の大学」(喜多村和之編訳、玉川大学出版部、2000)の解説より引用)
追記(2014.1.29):喜多村和之氏の訃報
2013(H25)年12月25日にご逝去の報がありました(日本高等教育学会のお知らせで知る)。トロウ氏が2007(H19)年に死去されてしまっているので、現在も進行しているユニバーサル・アクセス化の大学教育の状況について、直接の議論をお聞きすることが叶わなくなりました。ご冥福をお祈りいたします。
前掲のM.トロウ「高度情報社会の大学」の解説には、「アメリカにおける高等教育の発展段階」として図表と、続く議論があります。続報に、要旨を抜粋し、紹介する。
http://ed-science.blogspot.jp/2014/01/trow-model-re-revisited.html
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