2013/08/08

アクティブ・エデュケーションへの教育デザイン


「主体的で能動的な学び」を求めた、「大学教育の質的転換」中教審答申では
学習の主体が、教師ではなく学生にあることを改めて強調するものだった。

この根拠の1つには、米NTLによる調査成果である半年後学習定着率の
ラーニング・ピラミッド(学習ピラミッド)
http://homepages.gold.ac.uk/polovina/learnpyramid/about.htm が
紹介されることが多い(上図)。私自身も研修・セミナー等で引用したことがある。
しかし、ラーニング・ピラミッドについては、出典があやふやではないかとの指摘があり
批判的に見る必要がある。(山本(2011)によると、もとになったダールの「経験の円錐」が転化したものである)

半世紀にわたって、ラーニング・ピラミッドが信じられてきた背景も無視はできない。
学生の能動的活動( = activity )を伴う学修、すなわちアクティブ・ラーニングが、
学習の定着を高めるだけでなく、質的充実に有効であるということは
社会的構成主義教育観、教育者中心から学習者中心へのパラダイム転換、
生涯教育のために自律的学習者の必要性、多方面から支持されている。

さて、
学生のアクティビティを高めるためにはどうしたらよいのだろうか。

大学教育では、90分×15回の講義計画について
授業設計=授業デザインと教授法・学習法を見直す必要があろう。

学習科学/科学教育/教育方法学の観点(キーワード)
・教育目標の設定、評価の方法と、学習目標→学習成果サイクルのアセスメント
・教育評価の3段階=診断的評価、形成的評価、総括的評価
・授業冒頭の小テストと、議論を巻き起こす「コンセプトテスト」の提示
・反転学習のように事前学習を促す仕掛けと、授業時間内での学生間相互作用の促進
 (自律的な時間外学習と、学生同士の学び合い)
・ミニッツペーパーによる授業後のリフレクション
・観点別評価(認知領域・情意領域・精神運動領域)のルーブリック

教育工学の先駆者、沼野一雄は、反転授業の登場とその対策までを予見し
教授工学の概念と、教授学習プロセスの設計に優れたテキストを遺している。
特に、情報化社会と教師の仕事(1986)を座右に置くことを強く、お薦めする。
社会の情報化がすすむにつれて、また、コンピュータを利用したニューメディアが学校に導入されるようになれば、学校や教師にはどのような役割を期待されるのか。子どもたちのために学校や教師は何をしなければならないのか。この問いは、1人ひとりの教師がその教育観あるいは人間観に基づいて答えるべき問いである。
しかし、その答えは単なる理想や信念の表明であってはならない。少なくとも子どもたちの学習指導に意欲を持ち、そのための努力を惜しまない多くの教師に、現実に期待できるものでなければならないだろう。
CAIをはじめ学校におけるコンピュータの利用に関する議論が華々しいわりには、この問いに対してはまだ十分な議論がなされているとは言えないのが実情である。

主観と経験の表明を乗り越えること。

教育哲学(子どもたちのために大学や教師は何をしなければならないのか)の
自覚と責任の上に、
学生の能動性を高める教授設計、教育デザインによる
アクティブ ・エデュケーションの創成を、私たちは目指しているのである。

参考

  1. 山本富美子, 明快で論理的な談話に見られる具体化・抽象化操作 ―Edgar DALEの「経験の円錐」の論理的認知プロセスをめぐって― アカデミック・ジャパニーズ・ジャーナル, 3, 67-77 (2011)
    http://academicjapanese.jp/dl/ajj/AJJ3_67-77.pdf
  2. デールの「学習のピラミッド」は「経験のピラミッド」が元。
    http://blog.livedoor.jp/garjyusaiga/archives/52215131.html 2011.9.25
  3. 土田耕治, ラーニングピラミッドの誤謬
    http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03280_03 週刊医学界新聞 vol.3280, 2018.7.9

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