大学の知の集積の中心として、大学図書館は欠かせないものであるが、その物理的環境は、書架と閲覧スペースだけにとどまらずに、ラーニング・コモンズとしての機能を併せ持つように変容を遂げている。
科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会による審議まとめ(平成22年12月)「大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる大学図書館像-」 同 用語集では、
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/attach/1301655.htm
と定義され、学習支援への直接の関与の一例として挙げられている。文科省が毎年行っている「大学における教育内容等の改革状況について」のデータを追いかけると、ラーニング・コモンズの整備・活用を行っている大学数は、増加傾向にある。ラーニング・コモンズ
・・・複数の学生が集まって、電子情報も印刷物も含めた様々な情報資源から得られる情報を用いて議論を進めていく学習スタイルを可能にする「場」を提供するもの。その際、コンピュータ設備や印刷物を提供するだけでなく、それらを使った学生の自学自習を支援する図書館職員によるサービスも提供する。
まとめ(平成25年度):http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/1361916.htm
概要(平成25年度):http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/__icsFiles/afieldfile/2015/10/21/1361916_1.pdf
呑海沙織、溝上智恵子「北米の大学図書館における学習支援空間の歴史的変容-ブリティッシュ・コロンビア大学の事例から」 カナダ教育研究 8, 1-17 (2008) http://hdl.handle.net/2241/106837 が、ラーニング・コモンズの9つの構成要素(McMullen2008)を紹介している。文科省調査の状況と照らし合わせて、各大学がこの要素をどう満たしているか、差分から見えることもあるだろう。
1) コンピュータ群 (computer workstation clusters)
2) サービス・デスク
3) 共同学習スペース
4) プレゼンテーション支援センター
5) 教育支援センター (instructional technology centres for faculty development)
6) デジタル機器を備えた教室
7) ライティング支援センター
8) ミーティングやセミナ一、レセプション、その他の文化的イベントを開催するためのスペース
9) カフェ、ラウンジ
さて、これらを兼ね備えた学習支援の拠点あるいはサテライトのつながりを、デザインすることができるかどうかにも、大学における学習の価値が問われてこよう。